2009年 12月 16日

その16 <海からの贈り物>

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                                           つづく






「森は海の恋人」運動を御存知でしょうか?

山に住むばあちゃんは、「山は海の恋人」と、ちょっと間違えて覚えてしまっていますが、
本当は「森は海の恋人」という名前の、この運動。

これは、宮城県の気仙沼湾で、牡蠣やホタテの養殖をしておられる、畠山重篤さんとおっしゃる方が
もう20年以上前に始められた、
海の大切なパートナーである「山」や「森」を作る活動のことです。



畠山さんは、長年、牡蠣やホタテの養殖にたずさわってこられ、
良い漁場というのは、海に流れ込む川の上流に、落葉広葉樹の森があるものなのだ、ということを学ばれます。
何故、落葉広葉樹の森が必要か、と言うと
貝や魚のエサとなるプランクトン、
このプランクトンの生育に欠かせない養分が、
落葉広葉樹の森の、腐葉土の中に含まれているからなのだそうです。
これが、川を通じて海に流れ込めば、プランクトンが増えて、貝や魚が豊富になる。

ほんの50年ほど前までは、
薪や炭を燃料にしていたため、
里山には、その材料となるコナラやクヌギが、いっぱい生えていました(正確には、植えられていました)。
それらは、農家が使う、落ち葉堆肥の元でもあり、生活には欠かせない存在だったのです。
ですから、
その頃までは、
里山から養分いっぱいの水が流れ込み、日本中の沿岸が、素晴らしい漁場だったはず。
堆肥用に、落ち葉がかき集められていたとしても、
まだまだ充分、腐葉土は山にあったことでしょうから。
それくらい、薪炭用の林が、山々の、ものすごく広い面積を占めていたのですから。

しかし、
燃料がガスや電気、石油に切り替わり、堆肥は化学肥料に取って代わられるようになり、
里山のコナラやクヌギは「役立たず」の存在となっていきます。
そんな中で、山を持つ林家や農家が、
「売れる木を育てよう」
と落葉広葉樹の森を、どんどん杉の林に変えていったのは、いたしかたないことだと思います。
その頃は、木材の輸入が自由化されておらず、
杉を育てれば、建材として高く売れる時代だったのですから・・・・・・。

ただ、その結果、日本中の山から、落葉広葉樹の森が、どんどん減っていきました。
常緑樹である杉の林は、腐葉土を生みません。
加えて、川の上流にダムが多く作られ、川の水量そのものが減っていきます・・・。
こうして、流れ込む栄養分を失ってしまった海では、
プランクトンがどんどん減り、結果、貝や魚の漁獲量も減っていっているのです。
実際、
私が住む瀬戸内海沿岸でも、
天然の魚の漁獲量は、この数十年で、かなり減っているそうです。
瀬戸内名物のサワラなんて、本当に獲れなくなったと聞いています。
きっと、日本全国の沿岸で、同じことが起こっているのではないでしょうか。



このことに気づいた畠山さんは、気仙沼湾に注ぎ込む川の上流に、落葉広葉樹を植林する運動を始められました。
この運動のキャッチフレーズとなったのが
「森は海の恋人」。

この言葉にふさわしく、
この運動は、よくある植林イベントだけには終わっていません。
小中学生を、海にも連れ出すのだそうです。

気仙沼湾の、畠山さんの養殖場で、小中学生を前に、畠山さんは海の水をコップにすくいます。
プランクトンの豊富な海ですから、水はとても濁っている。
「透明な海が綺麗な海だ」と思っている子供達は、「うえ~~~。汚い水」と思いますが、
生活廃水で汚れているわけじゃない、プランクトンなんだ、と言って聞かせ、
なんと、その海水を飲め
と言うのだそうです。
私がその場にいたら「ゲッ!」と思うでしょう。
実際、飲めない子もいるそうですが、子供って好奇心旺盛ですね。
多くの子が「うえ~~~」って顔をしながら、飲むんだそうですよ。
その後、養殖場の牡蠣を、採ったその場で食べさせる。
美味しいでしょうねーーー。
で、
その美味しい牡蠣は、どうして出来るのか。牡蠣のためには、何が必要なのか?
豊かな山、森が必要なんだ、と教えるんだそう。

これは、スッと頭に入るだろうな、と思います。
そして、すごく広い視野を獲得するのだろうな、と。子供達が。



恥ずかしながら、私は、里山の手入れをしながら、海のことには、全く頭がおよんでいませんでした。
ですので、
ずっと手入れをしつつ
「この山の植生をどうしていったらいいのか」
結論が出ず、迷いっぱなしでした。

マスターTさんの山は、もとは薪炭林ですから、コナラやクヌギが多いのですが
しかし、
薪炭用の手入れをすることを30年前に止めてしまったため、
落葉樹が葉を落としてしまう時期になると、よくわかるんですが・・・・・・
落葉樹の下層に、常緑樹が育って来ているのが、わかりますでしょうか?↓
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これらは、落葉樹が葉を落とし、休眠している間に勢力を広げている椿、シイ、カシなどです。
薪炭林として手入れをされていた時代には、
こういう木々は、樹を伐り出す時の邪魔にもなるので、小さな苗木の段階で、冬の間に伐ってしまっていたはず。
・・・・・・でも、
30年以上、手を入れていませんから、常緑樹はすっかり大きくなって、今や「層」を成すほどです。

これらの常緑樹を、どうしたものか・・・と、私は、長く迷っていました。
だって、薪や炭を売るわけじゃないし、
家庭菜園用に落ち葉堆肥を作るにしたって、何十本もコナラやクヌギが必要なわけではない・・・。
なので、
常緑樹を置いておいて、
コナラやクヌギが、いずれ台風などで倒れたら、下層の木々に育ってもらえばいいかな?
なんて考えていた。
このあたりは、そもそも、人が手を入れる前は、シイやカシなどの照葉樹林帯だったはずです。
西日本は、そういう土地が多いですから。
ですから、
本来の植生に、いつかは戻っていってもいいのかなぁ・・・・・・・・・と。






でも、「森は海の恋人」運動を知ってから、考えは変わりました。

この山から流れる水も、瀬戸内海に注ぐ。

そう思うと、コナラやクヌギの森は、残しておきたいではないですか。



たかだか300坪の、私達の区画ではありますが、
海まで視野を広げたことで、「どういう山にしていくか」
方向が見えてきたような気がしている、7年目の冬なのでした。
   (ホント、300坪で、瀬戸内海のため!なんて仰々しいことこのうえないのですが、
    考えがまとまって、やっとスッキリしたと言うか、ホッとした気持ちなのです)





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by t-haruno-2 | 2009-12-16 16:10 | Comments(10)
Commented by veronica-t at 2009-12-17 00:05
とても勉強になります。
どうしても、見えるところばかり気になっていました。

例えば、谷川に倒れた木々やツルがとても多く、昔、土石流で尊い命の失っている谷ですので、「もし土石流が起きたら・・」とか、昔は湧水があったのに今は見かけないとか、そんなことが気になっていました。
また、山間部に暮らしておられなくても、生活排水の河川の汚染などが、深刻な問題になっているのは誰でもが知っていますよね。

でも、そうですよね。地球はひとつ、すべてつながっているのですから・・
海と山の子供らの交流に、ただいつもと違うお互いの体験(楽しいだけの)ではなくて、そういうことも伝えていくことが必要だと思いました。
もちろん私たち世代も・・。
Commented by nonisaku-hana at 2009-12-17 02:24
>でも、「森は海の恋人」運動を知ってから、考えは変わりました。
 この山から流れる水も、瀬戸内海に注ぐ。
 そう思うと、コナラやクヌギの森は、残しておきたいではないですか。

「山の子」のコナラちゃん、クヌギちゃんも大喜びでしょう!!

楽しくとても興味深く繰り返し繰り返し・・読ませていただきました。
いろいろなことを解りやすく教えていただいて、ありがとうございます!
一話一話・・創作と記事にまとめられる想い・・素晴しいです。ほんとうにお疲れさまでした!
Commented by kuroo at 2009-12-17 11:44 x
harunoさん こんにちは
里山整備の方向が見えたようで何よりです。
「森は海の恋人」・・いい言葉です。
秩父では、あまりに海が遠くて・・・実感として海を感じることはありません。
それに加えて、途中にダムが何個もあって、せっかくの栄養分が沈殿してヘドロになっています。
恋人に会うことも難しくなっていて、なかなか遠距離恋愛も大変です。

距離が遠くても、原則は同じですから、大きな川ほど大きな恵みを海にもたらすはずです。
「魚の泳ぐ海や川を再生するには、山や森を豊かにしなければならない」
瀬音の森の活動理念でもあります。
Commented by t-haruno-2 at 2009-12-17 18:37
>veronica-t さん
私も、いつも、目の前にある山の荒ればかり気になってしまいます。
ああ、竹が生えてきたとか、
台風で土砂崩れになった部分は、もう元には戻せないなぁ・・・とか。
海の人は海の人で、
魚が減って困ったとか、漂着ゴミが多いとか、
やはり目の前のことが気がかりでしょうね。
全体がつながっているということ、時々思い出さなきゃ、って思っています。
なにせ香川県は、狭いですから、里山と海が近いですし、
なにより、私自身は海のすぐそばに住んでいるし~・・・。
子供達の柔らかい頭に、それを伝えること、やはり大切ですよね。
Commented by t-haruno-2 at 2009-12-17 18:42
>nonisaku-hanaさん
ありがとうございます。
私が「こういう里山にしていこう」と思っていること、
シイやカシにしてみたら、さぞや大迷惑だろうと思うんですが、
でもでも、瀬戸内海の漁獲量がどんどん減ってる、なんて聞きますと、
怖いですものね。
こんなに海に囲まれた国が、魚や貝を輸入に頼らなきゃならなくなったら・・・
わやですもんね。
それに、常緑樹の森は、一年中日がささなくなるので、林床の山菜なども採れなくなりますし・・・
やっぱ、コナラやクヌギの森が続いて欲しい!と思っています。
Commented by t-haruno-2 at 2009-12-17 18:52
>kurooさん
こんばんは。
山と川、森と海の関係、kurooさんは、私よりずっとよく御存知で、その関係を良くすることに、長年心をつくしてらしゃいますよね。
先日は、川の清掃もされて。ホントにご苦労様でした。
大きな川ほど大きな恵みをもたらす・・・
そう、それを思うと、
江戸時代の東京湾・・・という言い方も妙ですが、
江戸時代の江戸前の海は、どれほど豊かだったんだろう???
って思います。
荒川、江戸川などから、落葉広葉樹の森の水が、どんどん流れ込んでいたんですもんね。
数え切れないダムが、今はどれほど海を貧しくしているか・・・
考えると、悲しすぎます。
300坪でも、瀬戸内海のために、私は落葉樹の森を守って行きたいと思います。
Commented by sakko at 2009-12-17 22:20 x
暖かい日が続いていましたから、この寒さ、堪えます。
我が家は奈良盆地の真ん中
海や山は遠くにあって
横を流れる川の汚染を気にしているsakkoです。
山と、森と海との関係
落葉樹との関係・・・・
なるほど・・・と沢山勉強になりました。
「森は海の恋人」そうですねぇ。
落葉樹の山、森、そして川も守っていきたいです。
Commented by t-haruno-2 at 2009-12-18 16:26
>sakkoさん
先週の金曜日は、実家の大掃除の手伝いに行っていたのですが、妙に暖かくて汗ばむほどでした。
それが1週間で、ものすごい気温差となりましたね。もうちょっと、徐々に寒くなってくれたら良いのに・・・。
ホント、震え上がってします。私も。
ところで、私の家も、近くに川の河口と、海があるので
川や海の汚れが気になっています。
目には見えないけど、水質の汚染。
それから、目に見えるゴミ、ゴミ、ゴミ。
大雨が降った後なんか、川の上流から、ゴミがドーーーッと流れてきて
河口も、海岸も、ゴミの山です。
こういう時は、内陸の方の人や、山の方の人がうらめしい・・・。
山も海も、つながってひとつ、ですのにね。
守っていかねばなりませんね。
Commented by 牡蠣の森を慕う会 at 2010-09-17 20:59 x

宮城県 牡蠣の森を慕う会(代表 畠山重篤、水山養殖場)と申します。森は海の恋人運動にコメントいただいている方にお知らせいたしております。このたび畠山重篤エッセイブログの掲載を開始いたしました。ご覧いただければ幸いです。今後とも宜しくお願いいたします。

水山養殖場WebStore HP管理者

重複のご案内の場合はご容赦ください。
Commented by t-haruno-2 at 2010-09-18 18:09
>牡蠣の森を慕う会さま
わざわざ御連絡をありがとうございました。
是非、読ませていただきます。
とても楽しみです。


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