2010年 01月 21日

その17 <もやかき>

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マスターTさんの里山の中には、二股に分かれた大きなクヌギやコナラがたくさんあります。
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いずれも、直径が30~40cmにもなろうかという、大きな樹ばかり。
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よく見ると二股の真ん中には、切り株が、埋もれるように残っていて
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この樹が、昔、伐採され、
その後「ひこばえ」が生え、それを「もやかき」されて、大きく育ったものなんだな、ということがわかります。
コナラやクヌギには、こういう、伐られても「ひこばえ」から再生する力が強く、
老木になるまで何度も伐られて、薪、炭、シイタケのほだ木に・・・と、人の暮らしに活用されてきました。
青子が圧倒されたように、
この再生の力は、まったく素晴らしい。
そして、再生力を知り、これらの樹を里山に植えていった先人達の知恵にも、また頭が下がるばかりです。

このような「ひこばえ」からの再生は、「萌芽更新(ほうがこうしん)」と呼ばれています。
私達のお借りしている区画と、その周辺をちょっと歩くだけでも
本当に、たくさんの萌芽更新したコナラやクヌギを見つけることができます。
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これは、マスターTさんの山では珍しい、三股。↓
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どの樹も、おそらく、伐採後30~40年は経っているのでしょう。
本来は、伐採後15~20年くらいの、もっと幹が細い時期に、再度伐採されていたはずですが、
薪や炭が使われなくなり、
伐られないまま、樹も大きくなっていったようです。
しかし、この「もやかき」された樹を見るにつけ、
次の伐採に向けて、マスターTさんは、ちゃんと樹を管理されていたのだな
と思い、
胸が詰まります。
あまりにも極端な、時代の変わりように。






ところで、「やまおやじ」という言葉、聞いたことがおありでしょうか?
これは、
もっと細い段階で何度も伐採され、萌芽更新を繰り返したコナラやクヌギの根元部分が
ボコボコと、コブのあるいびつなおイモのような形状になり、
そのうちに、真ん中にあった一番最初の切り株も腐って、おイモの中が空洞になり、
なんとも言えない不思議な形になったまま、山の中に立っているさまを、
写真家の今森光彦さんが、そう呼んだのだそうで、
「やまおやじ」の写真集も出されているんだそう。

私達の区画の樹は、
一度伐られただけで、その後放っておかれたものばかりらしく、
ボコボコといびつな「やまおやじ」は見かけませんが
もっと広くこの山を歩けば、私も、彼に出会えるのかもしれません。



皆さんの近くに、やまおやじはいるでしょうか?

もしいなくても、山歩きやハイキング、キャンプなどに出かけた時、周囲の森をちょっと観察してみてください。

そこに、やまおやじや、二股のクヌギが立っていれば
そこは、かつての里山。
多くの恵みをもたらす宝の山で、
今だって、気づきさえすれば、まだまだ多くの恵みが、そこからは得られるはずです。
誰かが「もやかき」をしたあかしが、今、そこに立っているのですから。








※ ※ ※ <追記> ※ ※ ※

「やまおやじ」について、
kurooさんから、「それは雪の積もる地域の産物だよ」と教えていただきました。
なるほど。

手元に「やまおやじ」の写真がないので、文字で説明するしかないのですが、
コナラやクヌギの樹の幹が、1メートルくらいの高さのところで、
ボコボコとおイモのようにいびつな形になっているのが「やまおやじ」です。
そして、そのいびつな部分から、また新しい枝が出ている場合もある。
1メートルくらいの高さがボコボコしている・・・
というのは、そこで何度も樹を伐ってるからですが、
<そんな高い部分で伐採をしている>という点が、不思議でした。
雪の降る地域で、積雪期に樹の伐採をしていたため、
地面から、はるかに高い所に切り株が出来た、ということなのですね。

私は、「やまおやじ」は本で見たのですが、
1メートル~1メートル50センチくらいの高さのボコボコした幹の樹が
山の中に存在しているのは、
まさに
「ヌッと立っている」
感じで
今森光彦さんが、これを「やまおやじ」と名付けたのには、
「上手いな~~~」と、感心するばかりです。



さて、
というわけで、
積雪の無い我が里山には、残念ながら「やまおやじ」はいません。
しかし、
「やまおやじ」的なものは、いるのじゃないか・・・?
つまり、
そんな1メートルも1メートル50センチも背丈が無くとも
地面に近いところで、何度も伐採を繰り返されて出来た
「ミニやまおやじ」みたいなのが
我が里山にいたっておかしくは無いのじゃないかしら・・・?
と考え、探してみたら
いました!
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ちょっとわかりづらいかもしれませんが、↑の右手手前に、切り株があるのが
わかりますでしょうか?
この樹を横から見ると、こんな感じ。↓
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斜面の下手で伐採されて、その後、上手に2本の樹が育っているのがわかります。
で、真ん中あたりがくぼんでいるのは、
一番最初の伐採時の切り株は、ここにあった、ということなのでしょう。
その、最初の切り株は、今はもう、分解されて土になり無くなった。
そして、2度目の伐採を経て
今や、3度目の伐採をするべき太さに、樹は育っています。
いや、本当に、落葉広葉樹ってすごい・・・。

・・・とはいえ
これは「やまおやじ」というより
「やまおやじの足」もしくは「やまおやじの靴下」と言った方が良いかもしれませんね。

私達の区画と、その周辺には、
何度も伐採を繰り返された樹というのは、あまり無いようで
「やまおやじの足」は、これ1本(と数えるべきか?)だけでした。

でも、こういう山仕事の歴史を、この目で見られるのは楽しいことです。



積雪の無い地域の皆さん。
山歩きやハイキングの時、
「二股クヌギ」や、「やまおやじの足」を、是非、探してみてくださいね。






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by t-haruno-2 | 2010-01-21 19:47 | Comments(10)
Commented by veronica-t at 2010-01-22 01:47
ふう〜、なんかとても凄いお話で感動して、すぐに言葉が出てきません。
でも、はるのさま、ありがとう・・。
うちの山も祖父が大事に手入れしてましたが、「もやかき」は気づきませんでした。今度、ちゃんと見てみます。
Commented by sakko at 2010-01-22 06:47 x
「もやかき」初めて聞く言葉です。
ひこばえの中から元気なのを選んで後は切り取ることですね。
この間から、悪戦苦闘中の我が家の柿の木ですが
あちこちから「ひこばえ」のような枝が出てきています。
様子を見て「もやかき」をしなくてはと思います。
前に屋久島に行った時、この二股の杉がありました。
古人もこうして「もやかき」をしたのでしょうか。
それとも自然に元気なひこばえがのこったのでしょうか。
幹を伐ってもまた2代目が生まれてくる・・・・
木ってすごいですね。
青子さんの過去も・・・・
Commented by kuroo at 2010-01-22 11:57 x
こんにちは
「もやかき」・「やまおやじ」里山の正しい姿ですね。
「やまおやじ」に関しては雪の多い地方で伐採が雪の時期に行われ、雪の深さ分の幹が残された結果、あのような逞しい寸胴な幹が出来たと聞いたこともあります。
雪のない地方では地面近くから萌芽するので、なかなか「やまおやじ」にはなりませんね。
青子さんが商社ウーマンだったとは驚きでした。
今後の活躍を遠くから応援しています。早くラガーマンの彼氏が出来ますように・・

明日は待ちに待った狩猟の取材です。
果たして、私の足で現役猟師さんについて行けるか。
奥山で取り残されて遭難さわぎになるか、熊に襲われるか・・・ドキドキです。
Commented by nature21-plus at 2010-01-22 16:17
はるのさん
かっこいい!!。
拝見してて、何だか嬉しくて涙が出てきた…。
知恵とか、知識とか言うことじゃなくて、青子さんが、里山の当然に当たり前に反応して…。そのさきに自らのライフスタイルにその感じたものをリフレーンさせる。それらのすべてが「自然体」で…。
おいら、「自然知」という言葉が好きなんです。
これは、いたずらに「自然を知る」のではなくて、ここでの青子さんのように自然との関わりに学び、その学んだものに自らを重ねて…。その先の知恵を言います。
つまり、人が人として生きていくにもっとも大切な知恵と、その理解のための姿勢なのかなと…。
すてきな物語を有難うございました。
Commented by t-haruno-2 at 2010-01-22 19:38
>veronica-t さん
私は、veronica-t さんのおじい様が山でされていたであろうことを、すべて身につけるのが夢なんですが、ちょっと夢がでかすぎるかしら・・・。
きっと膨大な知識をお持ちだったことでしょうね。
もやかきも、されていたでしょう。
↑でkurooさんがコメントしてくださいましたが、「やまおやじ」は雪のある地域のものだそうです。
なので、もしかしたら、veronica-t さんの山では、1メートルくらいの背丈のやまおやじが、あっちこっちに立っているかもしれませんね。
会って来てください。おじい様からの楽しい贈り物ですよ~~~。
Commented by t-haruno-2 at 2010-01-22 19:44
>sakkoさん
あ~~~。柿、大変なことに・・・。
でも、新しい枝がたくさん出ているってことは、まだまだ樹に力があるのですよね。
フカセの方が、良い手当ての仕方を教えてくださることでしょう。
柿好きのCちゃんのためにも、柿が立ち直りますように。

針葉樹は、一度伐り倒すと、ひこばえからの再生は無理なのだそうです。
なので、屋久島の、その杉は、成長途中で、何かで二股に分かれたまま
グングン大きくなっていったのでしょうね。
どっちかの枝が枯れなかったなんて、たくましい。さすが屋久杉、です。
ひこばえから何度も再生する広葉樹も、また、たくましくって、山で見るたびに感動しています。
Commented by t-haruno-2 at 2010-01-22 19:52
>kurooさん
ああ。あれは、やはり雪が関係しているのですか。
1メートルくらいの高さに伐り跡があるので、妙だなと思っていたんです。
冬中、雪に埋もれている土地で見られるものなんですね。
私達の区画には、地面についた場所に、ボコボコとした「やまおやじ」的なものがあるクヌギが1本あるのですが、
我が地方だと、あれが「やまおやじ」ということになるのかな。
「やまおやじ」というより、「やまおやじの足」という感じなのですが。

ところで、わぁ!とうとう、狩猟の日が。
ホントですよね。ついて行けるか、ドキドキしますね。
でも、現役猟師さんの足の早さって、話で聞いても、もひとつわからないですから、体験できるなんてすごい。
今晩は、早めに就寝、ですね。
頑張って、くらいついて行ってください!
Commented by t-haruno-2 at 2010-01-22 20:15
>nature21-plusさん
「自然知」かぁ・・・・・・。
深い言葉ですね。
山の手入れをしていると、自然と関わることで、色んなことを考えさせられます。
青子のように、自然の生命力に圧倒されることもあるし、
せっかくドングリから芽吹いた苗木を、ブチッと引っこ抜く自分の傲慢さ、残酷さに、人間の恐ろしさを見る時もありますし・・・。
人間って何?
自然って何?
と、いつもグルグル考えて、答えは風に吹かれて、どっかに飛んで行くばかりなのですが・・・
こうやって考えることで、大切な知恵に、1歩ずつでも近づいているでしょうか。

しまね自然の学校では、子ども達が、その大切なものを学んでいるわけですね。
たくさんの挫折があるだろうけど、竹のようにしなやかに・・・子ども達には生きて行って欲しいですね。
Commented by mikeblog at 2010-01-27 10:10
子供の頃父親に連れられて山仕事に行ったことがありましたが「下草刈り」なんて言っていましたっけ。もやかきとかやまおやじとかの木の一生の話は初めて聞きました。今度弟に聞いてみます。貴重なお話しをありがとうございました。
Commented by t-haruno-2 at 2010-01-27 20:02
>mikeblogさん
ミケさんは、小学生の頃、学校林の手入れに行った・・・ってこともおしゃってたし、
山仕事の思い出がたくさんあるでしょうね。
「下草刈り」。植林した苗木の周りの草を刈りに連れて行ってくれたのでしょうか。道々、昆虫捕りなどして、きっと楽しかったでしょうね。
やまおやじは、↑のkurooさんのコメントによると、雪の積もる地域の産物だそうです。
ミケさんのふるさとの山。積雪がある地域なら、やまおやじがヌーーーッと立っているかもしれませんよ~~~。


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